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富山家庭裁判所 昭和30年(家)128号 審判

申立人 渡辺礼子(仮名)

相手方 安田秀雄こと渡辺秀雄(仮名)

主文

申立人渡辺礼子、相手方安田秀雄こと渡辺秀雄を当事者とする昭和二十二年○月○○日届出にかかる婚姻は無効であることを確認する。

理由

申立人は主文同旨の調停を求め、その申立の理由として当事者双方は、その家族と共に終戦の頃満洲に居住し後抑留されていたものであるが、当時抑留者は夫婦或いはその家族は、独身者よりも早く帰国する事が出来た故、相手方は内地への引揚げを急ぐの余り、申立人には何等相談することもなく、又実際には婚姻を為す意思もなくして、申立人との仮装の婚姻届出を為したもので、勿論申立人も当時相手方と婚姻を為す意思もなく、又婚姻届も申立人不知の間に為されたものであり、又相手方は現在現住所に於いて他女と婚姻を為しその届出も受理せられた結果、相手方は渡辺秀雄或いは安田秀雄として、二重に戸籍に登載せられるに至つたと云うにある。

昭和三十一年三月二十八日開催した本件調停委員会に於いても、申立人は以上の如き事実の陳述を為したが、相手方は現在宮城県に居住し、当庁への出頭が困難であるため、当裁判所は、仙台家庭裁判所へ相手方に対する審問の嘱託を為した結果を綜合すると、相手方も上記事実に対して争いがない。

よつて当裁判所は必要なる調査を為し、調停委員の意見を聴いて、家事審判法第二十四条第一項に則つて主文の如く審判する。

(家事審判官 藤田善嗣)

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